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症例報告

ADD/ADHD

オーストラリアでの研究の結果、ニューロフィードバックがADHD患者に対し、85%の改善率を示しました。
以下、その研究結果の概要です。

ADHDのためのニューロフィードバック研究結果

Moshe Perl, B.Sc., M.Sc., Ph.D., MAPS
650 Glenhuntly Road
Caulfield South, 3162 Victoria Australia

概要

この研究結果が、ニューロフィードバックがADHDに有効であることを示しています。
3年間に及ぶ調査の結果、当クリニックを訪れたADHDの患者の85パーセントにニューロフィードバックのセッションが20回を超えたあたりから、著しい症状の改善が見られました。

背景

過去30年にわたって、脳波のリズムを変えることが生体機能に影響を与えることは知られていました。
これはEEGバイオフィードバック、ニューロフィードバック,または脳波トレーニングと呼ばれています。
被験者は変化する脳波の状態をほぼリアルタイムでフィードバックされ、それを良い方向に向けるようにトレーニングします。

1960年代後半から1970年代前半にかけてスターマンらにより、脳のセンサリーモーターストリップと呼ばれる部分における14Hzの脳波のトレーニングが、猫と人間の癲癇(てんかん)の発作を劇的に軽減、もしくは起こらなくすることが分かりました。
一般的に薬を使わないADHDの治療成功率は30パーセント前後で、薬を使って成功率は50から70パーセントに上がると言われています。
したがって薬を使わないでその治療率を30パーセント以上にできれば大変考察に値すると思われます。

臨床EEGジャーナルの編集者であるフランク・ダフィー医学博士が当ジャーナル2000年1月号に次のように書いています。
「この研究結果が、ニューロフィードバックが今後いろいろな困難な病状に中心的働きをしていく可能性を示唆しています。もし薬がこれほど広範囲に効果を示せば、もうとっくに世界的に広まっているでしょう。」

ジャーナルの記事は情動障害、各種中毒、分裂病、ADHD、外傷性脳損傷、発作障害の臨床調査について書かれています。

この研究において、なぜニューロフィードバックがADDに効果があるのは分かりませんが、ニューロフィードバックを取り入れると、ADHDの症状の解消に効果的であることが分かりました。

評価法

この研究の主な評価法として用いられたTOVA(Test of Variables of Attention)は、最も一般的で信頼性の高いADHDの診断基準の一つです。TOVAは数多くのADHDの研究の評価方法として使われています。

TOVAは標準得点フォーマットで、4つの部門に関する評価を与えます。
Inattention(不注意)ーテストの間中に被験者が呼ばれた時に答えなかった回数。
Impulsiveness(衝動性)ー被験者が呼ばれないのに応答した回数。
Response Time(反応時間)ー平均的反応時間。
Variability(反応時間の変化)ー反応時間の違い。

トレーニングの前に1度TOVAを受け、年齢に基づいた規準値と比較された被験者は、ニューロフィードバックのトレーニングを20回受けた後、2度目のTOVAのテストを受けます。他の研究でも20回のトレーニング後にTOVAを行い、その変化を見るというのが基準になっています。20回以上のトレーニングを行った被験者は、終了後に再度TOVAを受けました。

第2の評価法は、両親の報告(被験者が成人の場合は自己報告)が用いられました。
トレーニング前に両親による、課題遂行時における協調性、活動性、散漫性、衝動的行動、文章課題の完遂、問題行動の有無の評価をしてもらい、20回のトレーニング後に再評価してもらいました。

  • 非常に良くなった
  • 少し良くなった
  • 変わらない
  • 悪くなった

の4段階の評価をしました。
TOVAの場合と同様に、20回以上のトレーニングを受けた被験者はその終了後に再評価を受けました。

被験者の選択

被験者候補は全員、本人もしくは保護者による、インタビュー、症状チェックリストの記入、そしてTOVAを受けてもらいました。過去のテスト結果がある場合はすべてチェックされました。過去と現在の症状とTOVAの結果がADD/ADHDを示した者は全て参加しましたが、数人のアスペルガーと同一性障害等の重度の精神障害の者はトレーニングは続けましたが、研究対象からははずされました。また最低19回のトレーニングを完了しなかった者も除外しました。

当クリニックの患者からDSM IVの基準、インタビュー、TOVAによりADHDと診断された40人より、10人は最低数の19回のトレーニングを受けなかったので削除、(さらに6名が加わったが、現時点で19回に達していない)残りの24名中4人は、二回目のTOVAを受けなかったので両親の報告による評価をした。

2つのグループに分けました。
第1のグループは20回のトレーニング後にTOVAを受け終了しました。
第2のグループは20回のトレーニング、TOVAの後さらにトレーニングを続け、トレーニング完了後に再度のTOVAを受けました。

トレーニングは、EEGスペクトラム社製の2チャンネルのニューロサイバネティクスを用いて行われました。

頭皮の一部と耳をアルコール、コンダクティブ・ペイスト等で準備をします。
耳はリファレンスとグラウンド(アース)として使われます。
トレーニングに用いられたサイトは普通 C4 もしくは C3(国際的標準10-20システムによる)(または両方同時に)、場合によっては T3 T4 が使われることもありました。 1つのサイトだけのトレーニングの時もあり2つのサイトを同時にトレーニングすることもありました。
というのはADHD- inpulsiveタイプのトレーニングは右脳を中心に行われ、ADHD- inattentiveタイプは左脳を中心に行われるからです。
時にはP4も T4 や C4 といっしょに用いられます。
トレーニングで増やそうと試みる周波数は普通右脳が12-15Hz、左脳が15-18Hzです。
時として行動の落ち着きが求められる時は、周波数を下げてのトレーニングが行われます。
減らそうと試みられる周波数は、高い方が22-30Hz、低い方が4-7Hz、もし患者が学習障害を併せ持っていたり、トレーニング後に睡眠障害を起こした時は、2-7Hzが用いられました。

セッションは約45分、前回のトレーニングからの症状の変化の報告と話し合い、24分の実際のトレーニングにより構成されます。

薬物治療に関する注釈:
5人の被験者が、ADHDの徴候のコントロールのためにトレーニング中も薬物治療受けていました。
しかしTOVAを受ける前、少なくとも24時間の間薬を飲みませんでした。

結果

両親または自己報告書

被験者はトレーニング前と後にTOVAを受けた者と、受けなかった者に分けられました。
トレーニング終了後の評価では、71パーセントが3つ以上の基準における著しい進歩が見られました。
さらに17パーセントがある程度の進歩を示しました。注目すべきは只一人として、このトレーニングにおいて症状が悪くなった者が無いことです。

トレーニング前後にTOVAを受けた20人の内7人はさらにトレーニングを続けその後にもう一度TOVAを受けました。20回のトレーニング後に、14人がTOVAの2つ以上の項目において、8ポイント以上の向上が見られました。
さらにトレーニングを続けた7人を含むグループにおいては17人がそのような向上を見せました。
面白いことに、TOVAでよい結果を出さなかった3人は、両親による報告にて良い結果の出なかった5人に含まれていました。

トレーニング終了後のTOVAの結果、Inattention と Variability にて平均20ポイント以上の改善。
Impulsivity と Responce Time において平均10ポイント以上の改善が見られました。
通常一人の患者において、8ポイント以上の改善は臨床上大きなものと見なされるので、この結果は平均的に見て、ADHDの症状の重大な改善がなされたことになります。85パーセントの被験者が、TOVAの4項目中少なくとも2項目において、8ポイント以上の改善を示しました。
またその結果は、両親の報告もしくは自己報告と一致したものでした。
衝動性、活動レベル、不注意、催促されること無く最後まで課題をやり遂げること、癇癪(かんしゃく)の減少、攻撃性の減少、協調性の増加、意思疎通の改善、より安らかな睡眠、落ち着きの増加、朝身支度を一人でできるようになった。そして多くの場合社会的意識と社会性に著しい改善が見られました。

20回のトレーニングで、ほとんどの被験者が大きな改善を示しましたが、20回を越えさらにトレーニングを続けた被験者は、さらに良くなっていきました。 
この研究により必要なトレーニングの回数は、20回から40回、さらにそれ以上と個人差があるものの、30回程のトレーングが効果を出して持続させるのに必要であるということが分かりました。

ここであまり効果の出なかった被験者の考察の前に、只一人として症状の悪化した者の無かったことを取り上げたいと思います。
この否定的な副作用の無いことが、この否侵略的療法の安全性を示すものに他なりません。

トレーニングの結果著しい改善を示さなかった7人の被験者の調査:
一人目の被験者は、強い否社会性を示し、アスペルガー症候群と診察されるべきであったと思われます。
二人目の子供は、赤ん坊の時に身体的に虐待されており、ADHDに加えて反抗性障害と脅迫観念を持っていました。
残りの5人は両親が非協力的であったり、家庭環境に大きな問題を抱えていました。

結論として、適切なカウンセリングと周りの協力があれば、ニューロフィードバックはADHDの症状緩和に大変役立ちます。
ニューロフィードバック・トレーニングは患者が、家族、学校、仕事、社会と新たなより良い効果的な方法で対応し始めるのに役立ちますが、家庭環境にその原因がある場合、患者本人のニューロフィードバックトレーニングだけで問題が解決するとは思い難く、その場合家族療法等が必要となってくるでしょう。
反抗障害の患者は効果が出難かったのですが、ここでも家族療法等との併用が考えられます。

その後の両親への電話による調査によると、被験者は更なるトレーニング無しで、少なくとも1年以上その効果が持続しました。

癲癇(てんかん)

脳のエアロビとも呼ばれる脳波を使ったトレーニングを行い、脳の基礎体力を高め、発作発生の臨界点を高め、発作を出難く、もしくは出なくしていくのです。

ニューロフィードバックの誕生

誰もが良く知っているパブロフの犬の実験で、パブロフがベルの音と餌を一緒に出しつづけたら、ベルの音だけで犬はよだれを出した話ですが、実はその時、ブザーの音と電気ショックも関連付けたのです。
ベルが鳴ると犬はよだれを流し、ブザーが鳴ると怯えました。
そしてベルとブザーを交互に鳴らしていき、その間隔を短くし、最後に同時に鳴らしたら、犬は全く思いもよらない行動をとったのでした。
犬はそのストレスに耐えかねて、自ら眠ってしまうことにより、実験を降りてしまったのです。

時と場所が変わり、今度はアメリカでバリー・スターマンが猫を使い同じような実験を試みました。
レバーを押すと餌が出ることを教え込んだ猫に、ブザーの鳴っている間は餌を出なくし、鳴り終わるのを待たねばならなくしたのです。そしてその時の脳波を測ったのです。

スターマンはその時パブロフの犬と同様に、猫がストレスの為、マイクロ・スリープに入るのではないかと予想をしていたのですが、それまで見たことの無いような脳波が検出され、予想に反して猫は身じろぎもせず、じっと緊張し、ブザーの鳴り止むのを待ったのです。その様子はまるで猫が、小鳥が十分に近づくのを待っている時の感じだったのです。
その脳波を検出した場所は、行動と知覚に携わるセンサリー・モーターストリップと呼ばれる場所だったので、その脳波をSMR(Sensorimotor Rythm)と呼びました。
今度は猫がSMRを出した時に餌を与える訓練を行ったところ、猫は自由にSMRの出せるようになりました。
その訓練を受けた猫は、訓練を受けなかった猫に比べ睡眠中の脳波測定により、より安らかに眠るようになったのが分かりました。
(この実験結果はブレインリサーチ・ジャーナル1967年に発表されました。)

ここで奇妙な偶然により、この癲癇に非常に効果的なニューロフィードバックが生まれることになっていくのです。
当時のアメリカは、ソ連に宇宙ロケットの技術において追いつこうと躍起になっていました。しかしロケット燃料のmonomethylhydrazineは有毒で、その煙を吸ったり、手に触れてしまった作業員が吐き気を覚えたり、発作を起こしたり、死に至ることもあったのでした。
そこでその研究を委託されたスターマンは、早速猫を使った実験を始めました。

体重1Kgに対して10ミリグラムのロケット燃料を注射された猫は、よだれを流し、吐いて苦しみ、騒ぎ出し、激しい発作に見舞われました。
ところがその猫の中に、苦しみはしたものの発作を起こさなかった数匹の猫がいたのです。ここで感の良いあなたにはもう察しがついているかも知れませんが、以前の実験に使われたSMRの訓練を受けた猫が混じっていたのでした。 訓練を受けた猫は、受けなかった猫に比べ発作に対して強い耐性を示したのです。

そこで癲癇で苦しむ被験者にSMRの訓練をしたところ、驚くほどの効果を発揮したのです。
スターマンはその結果をEEGジャーナルの最高峰である、EEG and Clinical Neurophysiologyに1972年に発表し注目を得ました。

さらにスターマンは、A-B-A実験と言われ、今では人道上許されない実験を行いました。
一度SMRの訓練により症状の改善が見られた被験者に、逆のトレーニングを行い、元に戻した後、再び正しいトレーニングにて改善させることに成功したのです。
その結果は1978年にEpilepsiaにて発表されました。

しかしその後の政府資金の打ち切りや、機材が高価で、トレーニングをする場所が限られていたり、このトレーニングがあまり日の目を見ないまま、時が過ぎていきました。
ところが技術進歩による安くて強力なパーソナル・コンピューターの出現により、近年この状態が大きく変わろうとしています。
この癲癇の発作に有効なニューロフィードバックは、ADD/ADHDにも有効であることが分かり、さらに鬱病、自閉症、他、非常に広範囲にわたるその効果の程が分かり始めてきたのです。
脳の基礎体力を上げるのだから、当然と言えば当然なのですが、記憶力、集中力、IQ が上がり、自己開発の手段としても使われています。
数多くの実験も行われてきました。

それらの一部を下記に紹介しておきましょう。

参照

1. Birbaumer N Elbert T Canavan AGM et al. Slow potentials of the cerebral cortex and behavior . Physiol Rev 1990 ;70:1-41.

2. Birbaumer N Elbert T Rockstroh B et al . Clinical-psychological treatment of epileptic seizures : a controlled study . In : Ehlers A ed . Perspectives and promises in clinical psychology. 1st ed . New York: Plenum Press 1991 :81-96.

3. Birbaumer N Elbert T Rockstroh B et al . Biofeedback of event- related slow potentials of the brain . Int J Psychol 1981 ;16:389-415.

4. Rockstroh B Elbert T Birbaumer N et al . Cortical self-regulation in patients with epilepsies . Epilepsy Res 1993;14:63-72.

5. Kotchoubey B Schneider D Schleichert H et al. Self-regulation of slow cortical potentials in epilepsy: a retrial with analysis of influencing factors. Epilepsy Res 1996 ;25:269-76.

6. Kotchoubey B Strehl U Holzapfel S et al. Negative potential shifts and the prediction of the outcome of neurofeedback therapy in epilepsy . Clin Neurophysiol 1999;110:683-6.

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